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ホテルリネンのシミと汚れ


1.各リネンに付着している客室汚れの分類一覧

リネン類 シミ・汚れ分類 物質名 成分
シーツ
包布
1.タンパク質
2.有機物
3.飲食物
4.無機物
5.その他
・血液等
・遊離脂肪酸
・ジュース、ワイン等
・塵埃
・錆、カビ、擦れ汚れ
・ヘモグロビン等
・コレステロール等
・天然色素、合成色素
・カーボン、ゴム、アスファルト
・金属質、ゴム質
タオル 1.シャンプー剤
2.入浴剤
3.タンパク質
4.飲食物
5.有機色素
6.その他
・シャンプー、リンス
・入浴剤
・血液等
・ジュース、ワイン等
・靴クリーム
・錆、カビ、擦れ汚れ
・界面活性剤、ポリマー
・無機塩、合成色素
・ヘモグロビン等
・天然色素、合成色素
・顔料、ワックス
・金属質、ゴム質
ピロケース 1.整髪、化粧品
2.毛染め品
3.有機物
4.無機物
5.その他
・ポマード、チック
・ヘアカラー
・遊離脂肪酸
・塵埃、炭化物
・錆、カビ、擦れ汚れ
・脂肪酸、グリセリン、ロウ
・天然色素、合成色素
・コレステロール等
・カーボン、ゴム、アスファルト
・金属質、ゴム質
浴衣類 1.有機物
2.飲食物
3.医薬品
4.無機物
5.その他
・遊離脂肪酸
・ジュース、ワイン
・ビタミン剤
・塵埃
・錆、カビ、擦れ汚れ
・コレステロール等
・天然色素、合成色素
・各種ビタミン、色素
・カーボン、ゴム、アスファルト
・金属質、ゴム質

2.各リネンのシミと汚れ除去方法

①タンパク質

付着後時間経過の短い血液汚れは、弱アルカリ洗剤で水洗すれば良く落ちます。付着後時間の経過と共に、熱、酸化等により凝固する性質を有します。付着後は長時間放置せず、速やかに洗浄する必要があります。

②有機物

一般的には人が分泌する遊離脂肪酸成分が主体です。タンパク質同様付着後の時間経過と共に熱、酸化等により組成が変質し落ち難くなります。付着後は長時間放置せず、速やかに洗浄することを心がける必要があります。弱アルカリ性洗剤を用い温度を上げて洗浄すれば除去できます。

③飲食物

ジュース、ワイン等の色素が付着した場合は漂白剤にて漂白処理しないと除去できません。漂白剤は色素成分により使用する種類が異なります。次亜塩素酸ソーダ (塩素系酸化漂白剤)、過酸化水素、過炭酸ソーダ (酸素系酸化漂白剤)、ハイドロサルファイト、シュウ酸 (還元漂白剤) 等があります。 次亜塩素酸ソーダでの漂白処理は繊維の脆化があります。 ハイドロサルファイトでの還元漂白は亜硫酸ガスが発生するので換気に注意してください。 シュウ酸は強酸でありワッシャー等金属部分の腐食が進みます。シュウ酸処理自体は繊維に対して影響は少ないですが、繊維に残留すると加熱により繊維の脆化が進みます。

④無機物

カーボン、ゴム、アスファルト、珪酸分が主体であり繊維の間に絡まっています。 洗剤と機械力で除去できるものが多いです。

⑤シャンプー剤

シャンプー、リンスの単体であれば付着しても特に問題はありません。シャンプー、リンス 成分は界面活性剤であり洗剤、ソフター成分と同質のものです。 リンスインシャンプーが付着した場合はシミ発生が予想され注意を要します。 リンスインシャンプーに配合されているカチオン化高分子が綿(セルロース)に強固 に付着し汚れ成分を吸着します。通常の洗浄では落ち難いです。 浴室のタオル等で浴槽や壁面、床面を拭くと同成分が高濃度で付着し易いです。浴室の清掃には別途拭き上げ用のタオルを使用する必要があります。 同成分が付着したタオル等は十分な洗剤量を使用し、清澄な水にて洗浄する必要がありますが、それでも黒いシミが発生し落ちなくなります。 このシミの除去には"シミキラー処方"にて洗浄を勧めています。

⑥入浴剤

入浴剤の主成分である無機塩類は水溶性で、繊維に付着しても特に問題は無いです。 色素成分は弱い染料であり繊維に付着しても速やかに洗浄すれば除去できます。 シャワーカーテンに付着、乾燥が繰り返されて染色した事例があります。シャワーカーテンは長期間洗浄しないため汚れと染料が同時に付着し落ち難くなります。 洗剤と次亜塩素酸ソーダによる洗浄、漂白処理にて除去できます。

⑦有機色素

靴クリーム等の有機色素は油溶性でワックス成分と共に付着すると落ち難いです。 ワックス成分や油成分を落とすため高アルカリ処方にて洗浄する必要があります。 色素成分の除去には漂白剤による漂白処理が必要です。漂白剤は前述の通り 色素成分により使用する種類が異なります。

⑧整髪、化粧品

油脂類や水不溶性の原料を使用しているものが多いです。一部にカチオン化高分子を使用している製品もあります。充分な洗剤量とアルカリ助剤で洗浄します。油脂類の溶解、加水分解、鹸化処理のため、高温、高アルカリ処方による洗浄が必要であり処理を繰り返せば繊維の脆化が進みます。

⑨毛染め品

染料と安定化剤が主成分です。一部に水溶性の染料もあるが、多くは反応性の染料を使用しています。染料が繊維に付着すると通常の洗浄では除去不可です。 漂白剤による漂白処理が必要です。漂白剤は染料の種類により使用する種類が異なるが強固な染料が多く漂白処理しても落ち難い場合があります。

⑩錆

リネン類の保管、輸送中に付着する場合が多いです。通常の洗浄では除去できません。 "サビクリーン"やシュウ酸処理で除去できるが酸を使用するため注意が必要です。繊維に酸が残留し乾燥、加熱すると脆化が進みます。

⑪カビ

夏季に汚れたリネン類を濡れたまま放置すると発生します。通常の洗浄では除去できません。次亜塩素酸ソーダの浸漬処理で除去できることが多いです。 過マンガン酸カリも効果は強いですが、排水のマンガン規制の為勧められません。

⑫擦れ汚れ

リネン類を靴で踏む、台車、リフト等のタイヤで轢く、機械に挟み込む、地面を引き摺る事等により発生する汚れの総称です。泥成分、カーボン、油成分が繊維の奥深くに擦り込まれ通常の洗浄では除去不可です。客室のメンテナンス、リネンの輸送、工場での洗浄工程で発生が多いです。油脂石鹸を付けて手揉みするかササラで強く擦れば除去できますが効率が悪いです。洗濯機で一括処理できる処方として"リネンカムバック処方"を勧めています。先ずは擦れ汚れを発生させない努力が必要です。