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ドライ溶剤

現在国内で使用されているドライクリーニング溶剤は石油系溶剤が大半を占めております。ここ10年程前より新しい溶剤も登場してきました。エタン溶剤と良く似たベクセルクリン、化粧品素材のシリコーン溶剤、第3世代フロンのソルカン、オレンジオイルのフルーツドライがそれにあたります。今回クリーニング溶剤について纏めてみました。

1.クリーニング溶剤物性のまとめ

  石油系 パーク シリコーン
(直鎖)
ソルカン
365
ベクセルクリン
25
フルーツ
ドライ
化学名 炭化水素
混合物
テトラクロロ
エチレン
デカメチル
テトラシロキサン
1,1,1,3,3
ペンタフルオロ
ブタン
1-ブロモ
プロパン
リモネン
比重 0.80±0.05 1.62 0.85 1.27 1.40 0.84
引火点 40℃以上 不燃性 64℃ 不燃性 不燃性 48℃
沸点 150~200℃ 121℃ 195 40℃ 72℃ 177℃
KB値 25~35 90 14 13 125 67
毒性

2.クリーニング溶剤の特長

①可燃性について

上記の表より引火点のある溶剤は可燃性があります。したがって建築基準法に定める住宅地域や商業地域では原則として使用できません。パーク、ソルカン、ベクセルクリンが不燃性であります。

②洗浄性について

KB値(カウリブタノール値)が洗浄性の目安となります。KB値が高いと油性物質を良く溶かしますので洗浄性が強いことになります。但しドライクリーニングで除去できる汚れは不溶性(埃、煤等)と油性(皮脂、オイル等)であります。この油性汚れは石油系溶剤でも溶解できますので、実用上の洗浄性は石油系でも問題なしと考えられます。
また逆にシリコーン、ソルカンは穏やかな溶剤といえますが、溶解するソープも限られ、前処理剤も使用しにくい場合もあります。

③乾燥のしやすさ

乾燥のしやすさは沸点であらわれます。ソルカンが圧倒的に早く、次にベクセルクリン、パークと続きますが、乾燥が速いことは衣類に高温・長時間の負担が掛りませんので衣類にもやさしいと言えます。

④衣類に対するダメージ

石油はドライクリーニング可能な衣類すべて洗うことができます。但し場合により乾燥は自然乾燥が良い場合があります。留袖やスキーウエアー、ウレタンコーティングなどがそれにあたります。パークは品質表示がドライのマーク品を洗うことができます。ただスパンコール、フロック加工品等注意がいります。
シリコーン、ソルカンは穏やかな溶剤です。但しソルカンはアクリル樹脂を溶解しますので、アクリルボタンや顔料プリント、金粉・銀粉などアクリル樹脂を接着剤に用いている衣類は洗えません。
ベクセルはエタン代替溶剤として登場しました。パークよりも樹脂溶解力が強いので接着剤を用いたプリント。金粉・銀粉、ウレタンコーティング、スパンコール、ボタン、装飾樹脂等が付いた衣類は避けるほうがいいでしょう。
フルーツドライは石油とパークの中間程度であり、特にスチロール樹脂は分子構造が似ているので良く溶解します。洗浄・乾燥後にスチロールハンガーにかけてはいけません。

⑤有害性について

人体に対する有害性を許容濃度から判断しますと、ベクセルクリン、パークが強いと言えます。次に石油、ソルカン、フルーツドライ、シリコーンになります。石油は許容濃度500ppmですが、乾燥時の蒸気を吸わない限り、実質上無害に近いと考えられます。また同様にシリコーン、フルーツドライも揮発しにくく更に有害性は低い溶剤と言えます。

⑥価格について

価格は石油、パークが他の溶剤に比べて相当安価であります。また揮発しやすいソルカンは密閉状態を保ちロスを防がないとランニングコストが高くつきます。