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溶剤管理

1.ドライクリーニングでの汚れ

ドライクリーニング衣類に付着している汚れは不溶性汚れ(泥、埃、煤等)、油溶性汚れ、水溶性汚れがあります。 洗浄で除去出来るのは不溶性汚れと油溶性汚れで、不溶性汚れはドライ機附属のフイルターに捕捉されますので、溶剤管理で問題になるのは溶剤に溶解している油溶性汚れになります。

2.油溶性よごれについて

ドライクリーニング中に溶解しております油溶性汚れの成分は油脂、皮脂、オイル、ワックス、脂肪酸などであり、この溶解している成分が多いと溶剤が汚れていることになりますので、管理項目として酸価、透過率が悪いと油溶性物質が多いと言えます。

3.汚れの指標

溶剤の汚れ度合いを表すには透過率、酸価、不揮発性残分などが用いられます。どれも重要な項目ですが、特に透過率(色相)と酸価は重要で殆どの業者がご存知と思います。透過率は新液を100%、真っ黒を0%にした時に現在使用の溶剤がどのレベルにあるかを表しますが、60%以上が必要で、60%はビールを水で2倍に薄めた色相と言われております。溶剤の着色は衣類から出る染料や油性汚れ成分本来の色相から来ておりますので、吸着剤を用いますとこれらが吸着されることにより色相は回復します。透過率が悪いと再汚染の原因になります。綺麗に洗って返すのがクリーニングの重要な仕事ですので逆汚染は許されません。

【主な溶剤管理項目】

洗剤濃度 メーカー指定濃度
酸 価 0.3以下
透 過 率 60%以上
水 分 関係湿度75%
不揮発性残査 規定はないが2%以下
臭 気 異臭がないこと

4.酸価とは

次に酸価について考えてみたいと思いますが、溶剤に溶け込んでいる油性汚れの量はこの業界では酸価で示されます。酸価とは溶剤1g中に含まれる脂肪酸を中和するのに必要な苛性カリのmg数です。酸価が0.3の場合どれくらいの油性汚れが溶けているか計算してみます。 溶剤中の脂肪酸をオレイン酸(植物に多く含まれる液状の酸)に換算して200Lの溶剤中に溶解している脂肪酸量を計算するとは236gのオレイン酸が溶けていることになります。 脂肪酸はアルカリと反応するので酸価の測定は容易に出来ます。それ故、溶剤の汚れ度合いとして酸価を用いております。しかし実際の油性汚れは油脂、オイル、グリース等があり脂肪酸は全体の10分の1程度と言われていますので236gの10倍、2kg以上の油性物質が溶解していることになります。 酸価で汚れ状態を表しますので油性汚れは脂肪酸だけと思いがちですが、実際、脂肪酸は油性汚れの一部でしかありません。 酸価は『クリーニング業に関する標準営業約款』の適正なドライクリーニング洗浄液として0.3以下になっていますが、理想として0.1以下が望ましく思います。

5.機械の溶剤管理対策

石油ドライ機も古くはオープンワッシャーでしたが、時代と供に発達してまいりました。オープンワッシャーの時は珪藻土、活性炭、活性白土等をろ過剤に使用していましたが、ろ過剤の交換には非常に手間がかかり大変な作業でした。その後カートリッジ式のろ過方式が普及し交換もずい分楽になりました。カートリッジの中に入っている吸着剤の量も多くカートリッジ式の普及とともに管理状態(透過率、酸価)も良くなってきております。水分の問題を考えますと、ドライ洗浄後には余分な水分はタンク下に沈みます。洗浄を繰り返えしていますとこの水分が砂埃と共にタンクにヘドロとして堆積し、やがては嫌気性菌の作用で腐敗臭を放ちます。最近のドライ機はヘドロが堆積しないようにタンクを斜め構造にしたり、タンク掃除がしやすいよう設計されている機械が多く見られます。石油ドライにはヘドロの発生は避けられませんので、このような設計は望ましいことです。 またソープセンサー搭載が標準化された機械も多く出回っておりますが、ソープ濃度を一定にコントロールすることは過剰にソープを添加しないことにもなり、吸着剤(活性炭)のソープ吸着比率が下がり、逆に本来目的の汚れを吸着する能力が上がります。ソープが少ないのは困りますが、多すぎて吸着剤の寿命を縮めることも防止できます。溶剤を清浄する方法としてフイルターとは別に清浄カラム(活性炭専用カラム)をつけた機械もあります。この清浄カラムは切り替え式になっておれば、溶剤に色素による色が出た時に使用するのには便利です。またパウダーや粉末活性炭を使用出来る機械もあり、この場合溶剤の着色状態によって粉末活性炭を追加することが出来ます。また最近の蒸留器はコンパクトになり、また取り扱いも容易ですので、溶剤の清浄方法として取り入れやすくなってきました。